¡Hola amigos! どうも、るちゃ男です。今回はメキシコのプロレス界でCMLLと肩を並べる、もう一つのメジャー団体AAAについて、ざっくりとご紹介します。CMLLとAAAは、メキシコのルチャリブレを語る上で欠かせない存在ですが、実はその関係はまさに水と油。団体ごとのスタイルも、両極端と言えるほど違っています。CMLLが伝統と歴史を重んじるクラシカルな団体だとすれば、AAAは対照的な存在と言えるのではないでしょうか。今回もよろしくお願いします。
記事元:WIKIPEDIA
文章:るちゃ男yAI記者・Copilot
メジャー団体にしてライバル!AAAはどんな団体?
メキシコを代表するルチャリブレ団体のひとつ、AAA(トリプレ・ア)は、CMLLの強力なライバルとして知られ、特に若年層のファンから絶大な人気を誇る団体です。1992年に旗揚げされたAAAは、当時CMLLで裏方として活躍していたアントニオ・ペーニャ氏が、既存のスタイルに対する革新を目指し、CMLL所属の選手たちを多数引き連れて独立・設立したことに始まります。
伝統と格式を重んじ、古典的なルチャリブレの美学を守り続けるCMLLに対し、AAAはより現代的で視覚的な刺激に富んだルチャリブレを展開しており、派手な演出やキャラクター性を強く打ち出した選手たちが多く登場します。その試合は、まるでライブショーのようなエンターテインメント性を備えており、観客を魅了してやまないのが特徴です。

AAA設立者アントニオ・ペーニャ
AAA設立者であるアントニオ・ペーニャ(1951年6月3日〜2006年10月5日)は、自身もルチャドールとしてリングに立ち、華やかなマスクマン「エスピリトゥ」などとして活躍しましたが、1986年に選手生活を終え、裏方としてのキャリアに移行します。
引退後は、現在のCMLLの前身であるEMLLにて、興行の裏側を支える重要な役割を担うようになります。特に彼の卓越した創造力と先見性は、若手有望選手の発掘や斬新なキャラクター設定において大いに発揮され、数々の個性派ルチャドールの誕生に貢献しました。
こうした功績が認められ、ペーニャは上司であるファン・ヘレラと共にEMLLの興行全体の運営にも携わるようになります。興行面の演出強化や選手構成の刷新により、EMLLの魅力を高めることに成功し、団体の発展に大きな影響を与えました。

1980年代、メキシコ国内ではテレビ放送が急速に普及し、ルチャリブレは一般家庭にも広く浸透するようになります。このテレビブームの追い風を受けて、当時のEMLL(Empresa Mexicana de Lucha Libre・エンプレッサ デ ルチャリブレ)は視聴者層を拡大し、名実ともに業界トップのルチャリブレ団体へと成長を遂げました。
同じ時期、EMLLは全米レスリング連盟(National Wrestling Alliance)からの脱退を決意。これは独立性を高め、自らのルチャスタイルをより自由に表現するための一大決断でした。そしてこの転機を機に、団体名を現行の「CMLL(Consejo Mundial de Lucha Libre・コンセホ ムンディアル・デ・ ルチャリブレ)」へと変更します。
その後、CMLLの団体方針を巡って内部では意見が分かれるようになります。興行運営の中心人物であるファン・ヘレラは、伝統的なルチャリブレの精神を尊重しつつ、アトランティス、エル・ダンディ、エル・サタニコなど、技巧に優れたヘビー級選手を主軸とした安定感のあるルチャリブレを構築しようとしていました。
一方で、アントニオ・ペーニャは新たな方向性を模索しており、コナン、オクタゴン、マスカラ・サグラダといった若くて身体能力の高い選手たちの機動力とビジュアル面を重視するスタイルを提案。彼は、よりエンターテインメント性の強い試合展開こそが次世代のルチャリブレだと考えていたのです。
最終的に、CMLLオーナーであるパコ・アロンソは伝統を守る方針を優先し、ヘレラの構想に従ってヘビー級の実力派選手を中心に据えた路線を採用することに決定します。この決断が、後のペーニャによるAAA設立へと繋がる大きな分岐点となりました。






伝統を越えて:アントニオ・ペーニャと新時代の幕開け
CMLLオーナー・パコ・アロンソが、ファン・ヘレラによる保守的かつ伝統重視の選手起用方針を正式に採用したことで、アントニオ・ペーニャはその決定に落胆しつつも、己の理想を貫くべく新たな挑戦に踏み出します。自身が描く“新世代のルチャリブレ”を実現するため、ペーニャはメキシコ最大のテレビ局「Televisa/テレビサ」に接触し、協力を仰ぎました。

当時、テレビサは独自にルチャリブレ団体「Asistencia Asesoria y Administracion(アシステンシア・アセソリア&アデミニストラシオン)」、通称AAAを保有していました。ペーニャは、同団体のブッカー(興行企画・選手調整の責任者)として参画することになり、自身が育て上げた若手選手たちや独創的なキャラクターを積極的に導入。映像メディアの力を活かし、視聴者にアピールするエンターテインメント性の高いプロレスを展開していきます。
その後、1995年に発生したメキシコ国内の金融危機により、テレビサは資産整理を余儀なくされ、AAAの権利を手放す決断を下します。この機を逃さず、アントニオ・ペーニャは団体の全権利を買収。こうして完全な独立運営体制のもと、AAAを自らの手で本格始動させることに成功しました。
以降、AAAはペーニャのビジョンに基づき、CMLLとは一線を画すエンタメ重視のスタイルで急速に人気を拡大。メキシコ・ルチャリブレ界のもう一つの雄として、その存在感を高めていくことになります。
メキシコ史上最大48000人を動員した第1回トリプレマニア:動画元AAA Supercards TV
AAAとは何か?CMLLと違う“魅せる”ルチャの世界
CMLLと対峙するライバル団体として、アントニオ・ペーニャが立ち上げたAAA(トリプレ・ア)は、ルチャリブレ界に新風を吹き込む革新的な存在です。特に際立っているのは、以下の2つの特徴です
エンターテインメント性の追求
AAAの魅力のひとつは、従来のルチャリブレには見られなかった「演出性」と「物語性」の大胆な導入です。アメリカンスタイルのプロレス、特にWWEの影響を強く受けたその試合展開は、派手な演出や明確な善悪の構図、時に恋愛模様を織り交ぜたドラマチックな構成が特徴的です。
過去には、女子選手と男子選手の間で繰り広げられた恋愛ストーリーが観客の感情を揺さぶり、リングを舞台にまるでテレビドラマのような展開が展開されたこともありました。こうした試合以外の“演劇性”がAAAを単なるスポーツではなく、総合的なエンターテインメントへと昇華させています。
そして、団体の年間最大イベントとして位置づけられているのが「Triplemanía(トリプレマニア)」。これは、アメリカのWWEにおける「WrestleMania(レッスルマニア)」に匹敵する一大祭典であり、派手なカードと演出をもって毎年多くのファンを魅了しています。
六角形リングの導入
もうひとつ特筆すべきは、リングの形状に対する革新です。AAAは従来の四角形ではなく、六角形(ヘキサゴン)型のリングを導入した初の団体として知られています。このユニークな構造により、選手たちは試合中にあらゆる方向から場外へ飛び出すことが可能になり、空間の使い方がより自由かつ立体的なものへと進化しました。
リングの形が変わることで動きの流れも劇的に変化し、よりスピーディかつ予測不能な攻防が生まれるため、観客に新鮮な驚きをもたらしています。こうした構造的な工夫もまた、AAAが常に観る者を魅了し続ける理由のひとつです。


アントニオ・ペーニャの幻想工房:AAAを彩るルチャドールたち
アントニオ・ペーニャ氏は、従来のルチャリブレにはなかった個性とストーリー性を取り入れ、数々のユニークなキャラクターを生み出してきました。その中でも、特に子どもたちの心をつかんだ存在が「La Parka(ラ・パルカ)」です。
彼のトレードマークは、全身を包む骨柄のスーツと髑髏のマスク。その出で立ちは一見不気味で恐ろしい印象を与えますが、試合中に見せるユーモラスな動きや、相手を茶化すような挑発、さらには会場を沸かせるコミカルなダンスパフォーマンスは、観客を笑顔にするエンターテイナーとしての魅力に満ちています。ラ・パルカは、AAAが掲げる“見せるルチャ”の象徴とも言えるキャラクターです。
そして今、AAAの中でも新たな人気を集め始めているのが「Mr. Iguana(ミスター・イグアナ)」です。イグアナの名を冠する通り、彼のコスチュームや振る舞いは爬虫類的でありながらユーモラス。リング内外で恋人のような存在の“イグアナ”ジェシカを手に持ち、観客との掛け合いやコミカルな動きで笑いを誘いつつも、機敏なアクロバットと高い身体能力で試合を盛り上げます。ルチャリブレらしい奇抜さと親しみやすさが見事に融合し、近年はSNSなどを中心に若年層からの支持を急速に獲得しています。
また、注目の若手として頭角を現しているのが「Octagón Jr(オクタゴン・ジュニア)」です。伝説的なルチャドール、オクタゴンの系譜を受け継ぎながらも、自身のスタイルを築き上げ、最近ではWWEのリングにも登場。グローバルな舞台でその名を知られるようになり、AAA内外から大きな注目を集めています。
AAAにはその他にも、多くの女子選手たちが多様なスタイルとキャラクターで活躍しており、団体の彩りと奥行きをさらに深めています。ペーニャ氏が創り出した“自由と創造のルチャ世界”は、今も生き続け、進化を続けています。








AAAのスーペル・エストレージャはこの二人
ルチャリブレの世界では、団体の象徴とも言えるスーパースター選手を「スーペル・エストレージャ(Super Estrella)」と呼びます。CMLLではミスティコやボラドールJrがその名にふさわしい活躍を見せていますが、AAAにおいて現在その称号を背負うのはこのふたりの存在です。
El Hijo del Vikingo(イホ・デル・ビキンゴ)
AAAが誇る空中戦の天才、イホ・デル・ビキンゴは、驚異的な跳躍力と精密なアクロバットで国際的な注目を集める若きスーペル・エストレージャです。インパクト・レスリングやAEW(オール・エリート・レスリング)など、北米の有力団体でも精力的に試合をこなし、AAAの看板選手として世界にその名を轟かせました。
中でも、AAA最高峰のタイトルである「AAAメガ王座」を約830日間保持した偉業は記憶に新しく、AAA史においても屈指の王者期間を築きました。今後のAAA内外でのさらなる活躍が期待される存在として、彼のリングでの一挙手一投足からは目が離せません。

Psycho Clown(サイコ・クラウン)
そしてもう一人の“顔”とも言える存在がサイコ・クラウンです。カラフルなピエロマスクに包まれた彼は、その見た目の奇抜さとは裏腹に、試合では情熱と狂気が混ざり合う激しいファイトスタイルを披露。数多くのマスカラ戦(敗者がマスクを脱ぐルールの試合)で勝利を重ね、テクニコとしてもルードとしても、その存在感は揺るぎないものがあります。
近年では、国内だけでなくアメリカや南米、さらにはヨーロッパのイベントにも積極的に参戦しており、SNSではファンとの交流も活発。AAAの枠を超えて“メキシコルチャのアイコン”としての地位を築きつつあります。

「グローバル化するルチャリブレ:AAAの次なる章」へ
2025年、WWEによるAAAの買収は、プロレス界に大きな衝撃を与えました。これは単なる企業間の取引ではなく、ルチャリブレ文化そのものに新たな時代が訪れることを意味しています。
AAAは1992年にアントニオ・ペーニャによって設立され、個性豊かなキャラクターとエンターテインメント性の高い試合で人気を博してきました。今回の買収により、WWEは中南米市場への本格進出を果たし、AAAはグローバルな舞台での展開が加速すると見られています。すでに「Worlds Collide」などの合同興行が行われ、さらにはAAA所属選手がNXTのリングに登場する機会も増えています。
今後AAAは、WWEの資金力と制作ノウハウを活かし、映像演出や試合構成の面でさらなる進化を遂げるでしょう。一方で、伝統的なルチャリブレのスタイルがどこまで維持されるかは注目ポイントです。団体のアイデンティティが“WWE流”に染まることで、従来のファン層との距離が生まれる危険性もあります。
CMLLとの関係にも変化が出てくるかもしれません。CMLLは「本物のルチャリブレ」を掲げ、AAAとの差別化を強調。WWEの影響力がAAAに及ぶことで、CMLLはより伝統重視の姿勢を打ち出し、AEWや新日本プロレスとの連携を強化する動きも見られます。
AAAは今、グローバル化と伝統の狭間で揺れながらも、新たな可能性に満ちたステージへと歩みを進めています。WWEとの融合がどのような未来を描くのか──その答えは、これからのリングの上に現れるでしょう。
