LUCHA LIBRE RUDOS‐ルードと呼ばれる選手はどんな選手?‐

HOLA!AMIGOS! るちゃ男です。皆さんは、メキシコのプロレス、ルチャリブレには「善と悪」がはっきりと分かれているのをご存知ですか?特別試合やカップ戦などイベント的な試合を除いて、ルチャリブレの基本はヒーローである「テクニコ」と、悪役「ルード」の戦いなんです。

今回は、そんな試合を盛り上げる悪役たち、ルードと呼ばれる選手について解説してみたいと思います。一体どんな選手がルードと呼ばれ、彼らのファイトスタイルにはどんな特徴があるのか?彼らの魅力、そしてなぜ彼らが欠かせない存在なのかを、簡単に解説したいと思います。今回もよろしくお願いします。

メキシコのプロレス、ルチャリブレにおいて、ルードは「乱暴な」「粗野な」を意味するスペイン語「Rudo」が語源です。基本的には、ルード=「」ではないんです。

日本語では「ヒール」「悪役」と訳されますが、その名の通り、ルードと呼ばれる多くの選手は卑怯な反則行為や、暴力的な急所攻撃を駆使して観客を罵倒させます。手段を選ばず勝利を掴むヒール的な存在で、レフェリーの目を盗んで、ダーティーなファイトを貫くのが特徴です。

CMLLの場合はルード選手に対して極力このような行為は行わないように通達されているそうです。またアレナ・メヒコでは流血が禁止となっているそうで、テレビで試合を放送したりネット配信が関係しているそうです。

スペイン語には、単語の語尾で名詞の性別を区別する文法があり、男性選手は「ルード(Rudo)」、女性選手は「ルダ(Ruda)」と呼ばれます。この性別による呼称の違いも、ルチャリブレの興味深い点の一つです。

では、そんなルードが試合で見せる具体的な動きや得意技、そして彼らを象徴するマスクやコスチュームについて、さらに深く掘り下げていきましょう。

ルードは、単なる悪役のルチャドールではありません。彼らは観客の憎悪を煽ることを目的とし、そのファイトスタイルは「ダーティーさ」を基本としています。試合中のテクニコに対する暴言や反則行為はもちろん、ローブローのような急所への攻撃も得意技です。さらに、グーパンチストンピングといった、見た目の荒々しい技を使い試合を組み立てるのが特徴です。

ルードの闘い方は、相手を力でねじ伏せるのではなく、その卑怯な戦法で試合の流れを支配していきます。彼らが得意とするのは、レフェリーの目を盗んだ反則攻撃や、複数人で相手を袋叩きにする卑怯な連携プレイです。これらの技を巧みに組み合わせ、観客の怒りを最高潮に引き出します。

また、ルードが真骨頂を発揮するのは、その見た目とキャラクター性です。マスクやコスチュームは、トゲトゲしいデザイン髑髏(スカル)悪魔のモチーフなど、ルードを象徴する外見で統一されています。特に、マスクに使われる色は黒、黄色、赤など、人が見て直感的に危険と思う色を好んで使う傾向があります。さらに、ナルシスト、狂人、ギャングといった、観客の憎悪を煽るためのキャラクター設定で、リング外でも悪役としての一貫した態度を貫きます。これらの要素が組み合わさり、観客をどれだけ怒らせられるか、そのレベルが高まるにつれて、ルードとしてのステータスや知名度は高まっていくのです。

ここでは、ルチャリブレ界の歴史に名を刻んだ、伝説のルードたちを10選手をご紹介します。

この中には、今なお第一線で活躍し、ルードとしての存在感を放ち続けている選手も含まれています。彼らは単なる悪役ではなく観客の憎悪を一身に集めながらも、なぜか憎めない、そんな強烈な魅力を持つ選手ばかりです。ルチャリブレファンなら誰もが知る、彼らの力強い戦いと個性的なキャラクターに、ぜひ注目してください。

動画元:Lucha Libre City
  • 10 フェルサ・ゲレーラ
    1953年12月13日メキシコ・メキシコシティ生。1978年にデビュー、EMLL(現CMLL)、UWAAAAなどで活躍強。オクタゴンとの長年のライバル関係で有名。メキシカン・ナショナル・ウェルター級王座メキシカン・ナショナル・ミドル級王座WWA世界ウェルター級王座など多数のタイトルを獲得。息子や娘もレスラーとして活動中。現在もインディペンデントで活動を続けている
  • 9 ピラタ・モルガン
    (本名:ペドロ・オルティス・ビジャヌエバ、1962年7月29日メキシコ・メヒカリ生まれ)
    海賊キャラが特徴。1979年にデビューし、CMLLAAAIWRGなどで活躍したルード。家族もレスラーで、兄弟のエル・ベラクルサノ、ウニョ・ドス・ミル、息子のピラタ・モルガン・ジュニアなど。メキシカン・ナショナル・タッグ王座、IWRGインターコンチネンタル・ヘビー級王座など獲得。トレーナーとしても知られ、現在もインディーで活動中。
  • 8 ペロ・アグワヨ
    ルチャリブレの犬」「狂犬」と呼ばれた、メキシコプロレス界の象徴。荒々しい戦い方で人気を博した。ルードでありながら、観客を熱狂させるカリスマ性を持ち、時には対戦相手のテクニコを上回る人気を獲得しました。特にエル・サントやカネックとの抗争は、今なお語り継がれる伝説の激闘です。引退後も息子がその名を継承し、メキシコプロレス界の顔であり続けました。
  • 7 フィッシュマン
    本名:ホセ・アンヘル・ナヘラ・サンチェス、1951年1月6日メキシコ・コアウイラ州トレオン生まれ – 2017年4月8日没)は、緑と黄色の魚人マスクが特徴。1969年にデビューし、EMLLUWAAAAなどで活躍した。サンガナリオ・アトランティコ、ビクトル・キニョネスとのタッグで有名。UWA世界ライトヘビー級王座6回WWFライトヘビー級王座、メキシカン・ナショナル・ウェルター級王座など獲得。息子はエル・イホ・デ・フィッシュマンとして活動
  • 6 Dr・ワグナー
    本名:マヌエル・ゴンサレス・リベラ、1936年4月13日メキシコ・サカテカス州生まれ – 2004年9月12日没)は、白いマスクとマントのドクターの衣装が特徴。1950年代後半にデビューし、EMLLUWAなどで活躍。息子はDr.ワグナー・ジュニアメキシカン・ナショナル・ライトヘビー級王座UWA世界ミドル級王座など獲得。エル・ソリタリオやアンヘル・ブランコとのライバル関係で知られる。1990年代に引退。
  • 5 ピエロー・ジュニア
    ピエロ・ジュニア(本名:ノルベルト・サルガド・サルセド、1958年3月10日メキシコ・モレロス州クエルナバカ生まれ)1984年7月1日にデビュー CMLL、AAA、IWRG、WWCなどで活躍しました。ニックネームは「El Bocazas(大口男)」など。ナショナルライトヘビー級王座4回ナショナルヘビー級王座CMLL世界ライトヘビー級王座などを獲得。1998年にLAパークとのマスク戦で敗れマスクを失う。
  • 4 エル・シグノ
    ロス・ミショネロス・デ・ラ・ムエルテ(死の宣教師たち)」の一員として、ネグロ・ナバーロらとタッグを組み一時代を築いた。地味ながらも堅実な関節技と、相手を精神的に追い詰める戦法で観客の憎悪を一身に集めました。特に相手のマスクを破ることが得意で、彼を象徴する悪行として知られています。その地道で泥臭いファイトスタイルは、多くのルードに影響を与え、ルチャリブレ界に深く名を刻みました。
写真中央がエル・シグノ
  • 3 サングレ・チカナ
    メキシコの殺人鬼」という異名を持つ、ルチャリブレ界の伝説的なハードコア・ルードです。長い黒髪と狂気的な表情、そして血を意味する「サングレ」というリングネームが示すように、流血をいとわない激しいファイトスタイルで知られています。カネックフィッシュマンといったライバルたちとの抗争は、ルチャリブレ史に残る壮絶な流血戦となりました。その凶暴なキャラクターと、どんな相手にも屈しない精神は、多くのファンの心を掴み、悪役でありながら英雄視される存在となりました。
  • 2 シエン・カラス
    メキシコ・ハリスコ州出身の「マエストロ・デ・ラ・ルチャ(ルチャの巨匠)」の一人。ルードの中でも特に巨漢で、パワフルなファイトスタイルが特徴です。特に、ライバルであるラヨ・デ・ハリスコJrアトランティスとの激しい抗争は、ルチャリブレ史に残る伝説となりました。観客からのブーイングを力に変える生粋のルードであり、その圧倒的な存在感と悪役としてのカリスマ性で、長年にわたりメキシコマットの中心に君臨しました。
  • 1 カベルナリオ・ガリンド
    穴居人(原始人)」のキャラで知られる、ルチャリブレ界で最も有名な伝説的なルードの一人です。その名の通り、ボサボサの髪と野蛮な戦い方で、観客から強烈なブーイングを集めました。彼は、観客を挑発し、対戦相手の髪の毛を掴んで引きずり回すなど、ルードの基本となる「ダーティーな振る舞い」を確立した人物と言われています。また、相手の頭を叩きつける「カベルナリア」という技は、今も彼の代名詞として語り継がれています。

ルチャリブレの試合を初めて見た人は、ルード選手の卑怯な戦い方に驚くかもしれません。しかし、彼らは単なる悪役ではありません。ルードの存在は、ルチャリブレの試合を形作る上で欠かせない、重要な役割を担っているのです。

アメリカや日本のプロレスと同様にルチャリブレの試合一つ一つも物語です。そして、ルードはテクニコというヒーローの「正義」を際立たせるために存在すると言ってもいいでしょう。

ルード選手が反則を重ね、卑劣な手段でテクニコ選手を苦しめることで、観客はテクニコ選手への感情移入を深めテクニコに声援を送ります。そしてテクニコがルードの猛攻に耐え、最後の最後で華麗な大技を決め、勝利を掴んだ瞬間は、観客にとって何倍もの感動となります。ルードの憎らしいほどの悪行がなければ、テクニコの勝利は単なる結果に過ぎません。ルードは、物語に「葛藤」と「カタルシス」を生み出す、ストーリーテラーなのです。

ルチャリブレの会場は、ルチャリブレファンが持つ感情が爆発する場所です。ルード選手は、その感情を最高潮に引き出すための専門家です。彼らが汚い言葉を使い、観客を挑発すれば、ブーイングという形でルードへの憎悪を表現し、会場の一体感が生まれます。そして、そのブーイングが大きければ大きいほど、テクニコ選手への声援は大きくなりそれがテクニコ選手の力となります。
そしてルードがテクニコを苦しめれば、観客は「頑張れ!」とテクニコ選手へ声援を送り、テクニコが反撃をすれば、それを機に観客が感情を爆発させ、試合会場は熱気に包まれます。観客はテクニコ選手の一つ一つの動作に自分を重ね自分自身がルード選手に攻撃をしているような錯覚をします。その事からルード選手は観客の感情が爆発するきっかけを生み出す役割を担っていると言っても良いでしょう。

テクニコの華麗な空中殺法や、ルードのダーティーな戦術は、アメリカや日本のプロレスとは一線を画す、ルチャリブレという独自の文化を築き上げてきました。ルードは観客を煽り、観客がテクニコ選手を応援する形で試合に参加させ、会場の熱気をより一層高めます。

彼らは、正義だけでは成り立たない、人間味あふれるドラマをリング上で展開します。ルードの存在がなければ、ルチャリブレの試合は単調な技術の披露にとどまり、観客を熱狂させることはなかったでしょう。ルードこそが、メキシコ独自のルチャリブレ文化、そのエンターテイメント性の根幹を支えているのです。

ルチャリブレを初めて見る人にとって、ルードのダーティーな戦い方は驚きかもしれません。しかし、彼らは単なる悪役ではない事をこの記事で少しでも理解していただければ嬉しいです。
ルードは、ルチャリブレを成立させるために不可欠な、非常に重要な存在なのです。

彼らの魅力は、単に「強い」ということだけではありません。観客のブーイングを力に変える強靭なメンタル、どんな相手にも屈しない信念、そして何よりも、テクニコを際立たせるために、敢えて悪に徹するプロ意識こそが、ルードの真の魅力と言えるでしょう。

ルチャリブレの試合を観る際は、ぜひルード選手の「動き」に注目してみてください。彼らの存在が、テクニコを輝かせ、試合を何倍も面白くしていることがわかるはずです。ルード選手の一つ一つの動きを観察してルード選手と観客とのやり取りを理解すれば今以上にルチャリブレはもっと楽しくなるはずです。